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研究概要

色模型
  • 心理物理学的アプローチを用いた視覚,画像,照明などに関する研究
  • 有機EL照明の標準化活動,及び関連研究

を中心に行っています.

 

次に,各分野での研究のいくつかを紹介します.

画像・色彩

好ましい色再現(記憶色)

肌色や空の青空は,実は忠実に再現するよりも,「記憶色」として人間がもつイメージの色に近づけた方が好ましいと知覚されます.主として肌色を取り上げて,好ましいと感じられる条件を測定しています.これらの研究成果は,実際にみなさんもおなじみのプリクラや携帯画像の肌色調整などにも応用される技術です.

色の目立ち

二色配色パターンでも,選び方によってその色の目立ち方は変わってきます.どのような色配色が同じくらいの目立ちになるかを実験的に調べ,サインパターンやデザインに応用することを考えて研究を行っています.

質感知覚

光沢感やみずみずしさなど,見ただけで私たちはその質感を感じることができます.果たしてそれはどのような物理特性から知覚されているのでしょうか?照明とも含め,質感知覚について研究を行っています.

視覚・色覚

色平面

我々が知覚している色は心理的なものであり,同じ物理組成の光を見ても全く同じに知覚しているかは判りません.実験的に求めてみると,個人差があることがわかります.このことから,

①色覚の個人差がなぜ生じるのか

②色覚の個人差をどのように定量的に評価するか

研究を行っています.

色覚の個人差の定量化

原刺激と呼ばれる「RGB三原色」をどれくらいずつ混ぜるとスペクトル光と同じ色に見えるのかを求めたものを「等色関数」と呼びます.

この等色関数が個人によってどれくらい異なるのか,その違いを明らかにすることと,それを簡易的に測定する方法を調べています.

視覚の生理的構造と色知覚

人間の色知覚の個人差が,「眼光学系(眼に入る光が網膜上で視物質(錐体)に吸収されるまでに通る経路)の個人差で生じているのではないか」という仮説に基づいて調べています.

具体的には,網膜の手前に存在する黄斑色素*1の濃度や,網膜上の錐体比*2,錐体の感度などを実験的に求め,等色関数との関係や,色の見えとの関係を調べています.

 

*1 黄斑色素:網膜上の視細胞を紫外線から保護するために網膜中心部の手前に短波長成分を吸収する黄斑と呼ばれる黄色いフィルタのような組織があります.この黄斑色素の濃度に個人差があることが知られています.

*2錐体比:網膜上には分光感度が異なる3種類の錐体;L錐体,M錐体,S錐体;が存在しますが,中でもL錐体とM錐体の存在比率には大きな個人差があることが知られています.

色覚の可塑性

私たちの色覚は,眼に入る色情報に影響を受け,赤みや緑みの知覚量が変わります.前述したように錐体比が大きく異なっても色知覚がさほど変わらないのは,このような可塑性が働いている可能性もあります.入力色情報とその色知覚の変化量との影響など,可塑性の特性を調べています.

照明工学/有機EL関連

有機EL照明下での快適性・疲労度

有機EL照明が「人にやさしい照明」と言われるゆえんは何なのでしょうか.

それを定量的に示すことを目標に定めて実験を行います.

実際に,被験者に有機EL照明空間で過ごしてもらい,快適性や疲労度を脳波や心拍数,唾液中のアミラーゼなど数々の指標を用いて調べています.

有機EL照明下での色知覚

有機EL照明は,有機材料を選択することで,分光分布の組み合わせは無数に考えられますが,果たしてその照明の下で,私たちはこれまでの照明と同じように色を知覚できるでしょうか.従来光源下での色知覚特性と比較するために,心理物理実験を行って実証しています.

有機EL照明の褪色特性

プリントした資料や布製品を太陽光が当たる窓辺などに長期間置いていたら,いつのまにか色が褪せてしまった,という経験をお持ちの方は多いでしょう.

実は,有機EL照明にはUV成分がないため,このような褪色は起こしにくいと考えられています.はたしてそれがどれほどの実力なのかを確かめます.

美術館や博物館などで有機EL照明を適用することで,大切な絵画や宝物の現状の色を損なわずに保存が可能ではないかと考えられた,応用面を見越した研究です.

照明の変動知覚

私たちは,照明条件がどの程度変化したら明かりの変化に気付くでしょうか.「光源がちらつく」と気づくことと,「照明空間がちらついて感じられる」ことは同じ特性を示すのでしょうか.

このような疑問に対して,閾値(気付くかどうかの境目となる限界)を求める実験を通じて,答えていこうとしています.